個人事業主やフリーランスの人で1年の途中まで(例えば1月から3月まで)は勤め人だったけれども、その後退職して4月や5月から独立・開業をしたといったケースの人は多いと思います。
今回はそういった「年の途中」で開業した場合の確定申告を税理士に依頼する場合に、どういった資料を事前に準備しておくとその後の手続きがスムーズにいくのか、代表的なものをいつくか紹介したいと思います。
年の途中で開業した場合の確定申告を税理士に依頼する場合に必要となる資料14選
通帳のコピーまたはデータ
個人事業主やフリーランスとして自分で独立して開業した場合には1月1日~12月31日までの1年間を一区切りとしてその間の収支を計算する必要があります。
今回の記事のように1月~3月までは勤め人として勤務先に勤務し、その後退職して、4月や5月から個人事業主やフリーランスとして独立開業した場合には、4月~12月31日までであったり、5月~12月31日の期間の収支を計算する必要があります。
この収支計算を行った結果を記載するのが「決算書」と言われる書類になります。
こんなやつです(クリックで画像が拡大します。)↓
で、この収支計算を行うためには独立開業してから以降の取引を記録して、「帳簿」といわれるものを作成する必要があるのです。
そして、この「帳簿」の作成において(一般的に)メインの1つになるのが通帳の取引を記録することになります。
ということで通帳の取引を確認するために「通帳のコピー」が必要になります。
この通帳ですが、あくまで事業で使用している通帳が必要になります、「事業で使用している通帳」とは主に
- 売上の入金がされる
- 仕入の代金の支払いや事務所の家賃などの経費の支払いをしている
- 国民年金保険料や国民年金保険料の引落がされる
- 事業で使用しているクレジットカードの利用代金の引落がされる
- 事業開始の際に銀行から借りたお金の返済がされる
といった通帳をいいますので、自分の事業とは関係のないプライベートの通帳、例えば生活費を出し入れしているだけのような通帳に関しては「帳簿」を作成する必要はありませんので特に必要ありません。
ちなみに、ネット銀行など、通帳が発行されない銀行を事業で使用している人もいるかと思います。
その場合にはネット銀行の取引履歴をPDFやCSVデータで出力していただければ問題ありません。
少し話が逸れますが、2023年1月16日からネット銀行であるGMOあおぞら銀行がPay-easyに対応することが発表されました。
これにより今までネット銀行を利用する場合のネックであった、社会保険料の支払いや所得税をはじめとした税金の支払いが可能になりますので、事業を行う際のメイン銀行を決める際に選択肢の1つとしてネット銀行を選択する流れが生まれるかもしれません。
売上の請求書の控え
ここまででお伝えした通帳の取引の記録とは別に「帳簿」の作成においてメインとなるもう一つの処理が「売上」の金額の記録になります。
売上の記録とは「売上が1年間でいくらあったのか」を記録することをいいますので、自分が取引先などに発行した請求書の控えをみることで簡単に確認することができます。
ということで「売上の請求書の控え」が必要になります。
- 複写式の紙の請求書に記載して取引先に請求書を渡している場合にはその控えを、
- Excelなどのソフトを使用して請求書を作成している場合にはそのExcelのデータを、
- クラウドサービスを使用して請求書を作成している場合にそのクラウドサービスからPDFやCSVなどに出力した請求書のデータを
準備するようにしましょう。
経費に関する領収書・請求書
「帳簿」の作成においてメインとなる処理の最後が「経費」の金額の記録になります。
文字通り、「経費が1年間でいくらあったのか」を記録することをいいますので、手元にある、経費に関する請求書や領収書・レシートをみることで簡単に確認することができます。
- 事務所を賃貸している場合には賃貸の際の「契約書」
- 事業で使用する車を購入した場合には自動車の「注文書」と「車検証」
- 12月末締の請求書等のように、12月までに請求がきている(12月中に仕入等が完了している)が、実際に支払ったものは翌年1月である仕入等の請求書
などといったものも必要になりますので準備しておきましょう。
なお、自動車を購入した際の準備資料に関してはこちらの関連記事をご参照ください↓
2022.01.08
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独立前・開業前の勤務先から発行された源泉徴収票
年の途中で勤務先を退職して、その後独立・開業した場合にはそれまで勤めていた勤務先から「源泉徴収票」が発行されるはずです。この「源泉徴収票」は確定申告で必要になります。
源泉徴収票とはこういったものになります↓(クリックで画像が拡大します。)
この源泉徴収票ですが、どんな役割があるかというと、それまで勤めていた勤務先で
- どれくらい、給与をもらっていたか
- どれくらい社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)を払っていたか
- どれくらい所得税を払っていたのか
- 生年月日はいつか
- 退職した日付はいつか
などを確認することができる資料になります。
通常、退職した後にしばらくして会社から支給されるものにはなりますが、たまに支給されない場合もありますので、手元にない場合や、紛失してしまった場合には勤務先に連絡して再発行をしてもらうように依頼しましょう。
国民年金保険料の控除証明書
独立後には大半の人が国民年金保険料を自分で支払うことになるかと思います。この国民年金保険料については支払った金額が確定申告の際に「所得控除」として使用することができます。
で、1年間に支払った国民年金保険料の金額を証明するために年金事務所から下記の「控除証明書」が送付されてきますので準備しておきましょう。
こういったものです↓(クリックで画像が拡大します。)
ちなみに、送付されてくる時期は大体10月から11月くらいになります。
紛失した場合には再発行が可能ですが、確定申告の時期は手続きが込み合い、再発行までに時間がかかりますので早めに手続きしておくようにしましょう。
国民健康保険料の支払った金額がわかる資料(現金支払の領収書や引落が記録された通帳)
病院に行った際に医療費の負担が3割負担になるように、独立後は国民健康保険に加入することが多いと思います。
この国民健康保険料に関しては年金保険料と同様に支払った金額が確定申告の際に「所得控除」として使用することができます。
国民健康保険については国民年金とは違い、「証明書」といった形で書類が送付されてきたりするものではありません(※自治体によっては1年間に支払った金額を書類に記載して送付してくるところもあります)ので
国民年金保険料を支払った際の領収書を残しておくか、口座引落により健康保険料を支払っている場合には通帳を残しておくことで金額を把握することができます。
領収書を紛失した場合にはお住いを管轄する市役所の窓口に行って事情を説明すると、1年間で支払った金額を教えてくれると思います。
生命保険の控除証明書
民間の生命保険会社の生命保険(死亡保険や医療保険、個人年金保険)に入っている場合には保険会社から毎年10月~11月にかけて「控除証明書」が送付されてきます。
この控除証明書は確定申告で使用して税金を安くすることができますので準備しましょう。
もし紛失した場合には契約している生命保険会社に連絡して再発行をしてもらいましょう。目安としては10日~2週間程度あれば再発行してもらえると思います。
会社に勤めていた際には12月頃にやっていた「年末調整」の際に会社に提出していた資料といえば、わかる方も多いのではないでしょうか?
地震保険の控除証明書
自分が住んでいる自宅やマンション、アパートなどに対して地震保険をかけている場合には、上記の生命保険の控除証明書と同様に、地震保険に関しても「控除証明書」が送付されてきます。
こちらの控除証明書についても確定申告で使用して税金を安くすることができますので準備しましょう。
小規模企業共済の控除証明書
小規模企業者の退職金制度である「小規模企業共済」に加入して掛金を支払っている場合には、支払った掛金に関しては確定申告で使用して税金を安くすることができます。
小規模企業共済に関しての詳細は下記よりご確認ください。
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/
この小規模企業共済に関しては下記の画像のように葉書サイズの控除証明書が送付されてきますので、準備しておきましょう。(クリックで画像が拡大します。)
送付されてくる時期は大体11月くらいで、遅くても2月中には届くはずです。
もし紛失等した場合には早めに再発行をするようにしましょう。
医療費の領収書
自分や、自分と一緒に生活している家族が病院に行って診察や治療をうけ、その治療費を支払うことはよくあると思います。
この、医療費ですが、1年間の医療費の合計金額が一定の金額以上(よく言われる目安金額は10万円)ある場合には確定申告で「医療費控除」として税金が安くなる可能性があります。
自分と自分の家族について1月1日から12月末までの1年間に支払が完了した医療費の領収書が10万円以上(またはそれに近い金額)ある場合にはその領収書を整理して準備しておきましょう。
医療費控除に関する関連記事はこちら↓
2022.03.13
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ふるさと納税の控除証明書
近年ではしっかりお茶の間に浸透した感がある「ふるさと納税」
このふるさと納税をした場合には後日、ふるさと納税をした自治体(市役所や町役場)から「寄付金の控除証明書」が届きます。
この書類は確定申告で使用することになりますので準備しておきましょう。
なお、「さとふる」や「ふるなび」等をはじめとした特定のサイトでふるさと納税をした場合には、そのサイト上から控除証明書をまとめて発行することもできますので、たくさんの自治体にふるさと納税をした場合や、控除証明書を紛失した場合にはこういった方法も参考にしていただければと思います↓
令和3年分の確定申告から「ふるなび」や「さとふる」や「楽天ふるさと納税」などの特定のふるさと納税サイトが発行した控除証明書を確定申告の資料として使えるようになったので試しにやってみました。 証明書の申込からデータの取得・印刷までの過程を備忘
運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなどの本人確認書類
確定申告書には申告する人の名前や生年月日、住所を記載して提出することになっていますので、その記載事項に間違いがないかを確認するために、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードといった、いわゆる「本人確認書類」が必要になります。
上で紹介した「源泉徴収票」にも住所や生年月日といった事項の記載がされていることが多いのですが、記載事項に間違いがあることもありますので、運転免許証などの本人確認書類があると確実です。
なお、本人確認さえできればよいので、運転免許証などをスマホで写真を撮っておく、コピーを取っておく。といった準備の方法で問題ありません。
家族の氏名・生年月日がわかる資料
結婚されていて、配偶者(奥さんや旦那さん)やお子さんがいる個人事業主やフリーランスの場合、一定の条件をクリアすると、いわゆる「配偶者控除」や「扶養控除」等といった、税金が安くなる優遇措置を受けることができます。
これらの税の優遇を受ける際には申告書に配偶者やお子さんの名前と生年月日を記載していくことになりますが、その記載事項に間違いがないかを確認するための「公的な資料」が必要になります。
具体的には配偶者やお子さんの健康保険証、マイナンバーカードなどです。
これらの資料を準備しておきましょう。
なおこれに関しても上で述べた「本人確認書類」と同様、配偶者やお子さんの氏名と生年月日などの確認さえできればよいので、健康保険証などをスマホで写真を撮影しておく、コピーを取っておく。といった準備方法で問題ありません。
開業届の控え・青色申告承認申請書の控え
いつ独立開業したのかを決算書に記載していく必要があるのですが、この開業日を確認するための公的な資料として税務署に提出した「開業届」が必要になりますので準備しておきましょう。
こんなやつです↓(クリックで画像が拡大します。)
開業届に関する記載事項等を説明した関連記事はこちら↓
2020.10.31
フリーランス・個人事業主が開業したらやっておくこと① 開業届の提出
フリーランス・個人事業主の方が開業した場合には税務署に対していくつかの書類を提出しておく必要があります。提出する書類の種類と数についてはフリーランス・個人事業主の方の業種や事業の規模によって変わりますが、その中でも代表的な提出書類があります。今回から数回に分けてそれら代表的な書類の内容と具体的な書...
また、青色申告をすることができるのか、そうでないのか(いわゆる白色申告)を判断するためには税務署に提出した「青色申告承認申請書」の控えも必要になりますので準備しておきましょう。
青色申告承認申請書とはこんなやつです↓(クリックで画像が拡大します。)
もし、紛失等して手元にない場合や、そもそも控えを準備していなかった場合には提出先の税務署に行くと「開業届」や「青色申告承認申請書」が提出されているのかどうか教えてくれますので早めに確認しておくようにしましょう。
青色申告承認申請書の記載方法等を説明した関連記事はこちら↓
2021.09.07
フリーランス・個人事業主が開業したらやっておくこと② 青色申告承認申請書の提出
フリーランス・個人事業主の方が開業したらやっておくこととして前回は「開業届」の提出について紹介しました。 前回の記事はこちら 今回はフリーランス・個人事業主の方が青色申告をするための必須の手続き 「青色申告の承認申請書」の提出について紹介します。 なぜ青色申告をするのか? 青色申...
まとめ
年の途中で勤務先を退職して、自分で独立・開業した個人事業主やフリーランスの人が、開業1年目の確定申告を税理士に依頼する場合に必要となる資料を紹介しました。
事業の種類によってはここに記載した以外の資料も必要になる場合がありますが、ひとまず今回の記事で紹介した資料を準備しておくと税理士側でスムーズに確定申告書の作成作業を進めることができますので参考にしていただければと思います。
弊社では顧問契約が不要な単発の税務相談サービスを提供しております。
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